2021.01.17    東京都の感染者推移グラフ.3  

前回の「感染者推移グラフ」はこちら

報告日別による陽性者数の推移

通常ニュースなどに出てくるのもは東京都が発表するこの「報告日別による陽性者数の推移」です。
(図1)


ただし、このデータたけで一喜一憂する訳にはいきません。医師や保健所の業務逼迫で、検査結果が直ぐに報告集計される訳ではないからです。なので私はより実態に近い確定日別のデータでグラフを作っています。

確定日別による陽性者数の推移

(図2-1)

上二つの図の線グラフでは赤が普通の移動平均ですが、黒は3日ズラして1週間の中央地に加工しています。その黒い線グラフもピークを打っているので、局所的には下降に転じた、慎重に云えば上げ止まってはいると判断出来ます。

例えば今年の元旦夜間に発表された時点に戻すとこうなります。説明の為にここでは黒も普通の移動平均ですが、右端の直近部分を赤にしているのは、この部分は報告・集計の遅れから明日、明後日、明明後日に増加するからです。
(図2-2)

問題箇所を拡大してみましょう。7日間移動平均を見ても一見天井を打って反転し始めたと。
(図2-3)

しかし7日間移動平均が実際に天井を打ったのは1/10で下降は1/11から。前後7日間の移動平均なら1/7がピークで、下降は1/8からです。報告日別と確定日別でグラフが異なるのは報告の遅れ。その報告の遅れで、一見天井を打ったように見えてしまう。

その報告・集計遅れがどれぐらいあるのかを示すデータが次の表です。前日との差分(増分)を計算したもの。これだけでもかなりの遅れが出ていることは見てとれます。なお12/24と1/8の列が空欄になっていますが、それは私がデータを取り忘れた日です。
(図2-4)

何日前ならほぼ信用出来るのかを数値化する為に、当日、前日を同じ行に編集しなおしたのが下の表です。EXCELに精通している訳ではないので毎日手作業です。データを取り忘れた日とその翌日は省きました。
(図2-5)

その集計結果がこれです。「1」が当日ですが、当日の検査結果が集計に反映されることはまずありません、0.3%。主に前日の検査確定分ですね。先の移動平均からも当日分は除いています。それに加えて3日分の赤とは下の表では「4」までが赤。それ以前はほぼ5%、よって大勢に影響は無しというのが「確定日別」グラフの黒い線グラフです。逆に赤い部分は急拡大の最中でも下降気味でした。単に報告がまだ届いていないというだけです。
(図2-6)

「報告日別」グラフより「確定日別」グラフの方が実態に近いのですが、しかしその差分、つまり報告・集計遅れの為に3〜4日前までのの実態しか判りません。

発症日別集計

「確定日別」グラフよりも更に実態に近いのが発症日別集計です。そのグラフの注にはこうあります。

  • 各保健所から報告があった患者の発生情報を、発症日別に整理したものである
  • 発症日不明者(検査結果が陽性であっても症状がない、発症日を覚えていないなど)はグラフから除いている

この発症日は検査結果が陽性となった方々への聞き取り調査でしょう。ご本人の記憶なので多少の誤差は含むはずですが、でも調査しうるデータの中ではこれが一番感染拡大の実態に近いものになります。

「発症日別集計」の日々の発表データは1/10から1/17までの8日間を記録しています。つまり1/10を基点としてその後1週間となります。下のグラフは青が1/10発表のもの。その後7日間の増加分が赤です。
(図3-1)

たまたまかもしれませんが、1/10時点のピークは1/4の1123件。1/17時点でもピークは1/4です。件数は1415件に増えていますが。

その1週間の増加分だけグラフにしたのが下です。
(図3-2)

ただし上のグラフは単純に1週間分の増加だけなので、「発症日別集計」で新たに発見された発症日がどういいう分布なのかを見てみましょう。すると90%を超えるのは10日かかり、99%を超えるのは18日かかります。7日間の平均ですが。
(図3-3)

グラフにしたのがこれです。
(図3-4)

ところで現時点の最大の関心事はピークは過ぎたのかということです。

第三波のピークは?

冒頭の「報告日別による陽性者数の推移」ではピークは1/7の2447人。ただしその後2日間も2000人越えです。単純7日間移動平均では1/11がピーク。しかし単純移動平均は過去7日間の平均です。なので7日間の中央にズラすと1/8がピークです。

次の「確定日別による陽性者数の推移」では前後1W平均を見ると1/7がピークです。そして「発症日別集計」では1/10の公表データでも、1W後の1/17公表データでもピークは1/4。既に2週間近く経っていますのでこのピークは動かないでしょう。1/7とか1/8からは3〜4日前ということになりますが、「発症日別集計」でも陽性確定日と発症日の差は4日前がピークなので、ほぼ連動していると見做しても良いでしょう。ただし、新規感染のピークは過ぎたとは云え、まだかなりのレベルで、加えて医療の圧迫は遅れてジワジワとやってきます。

感染のピークは?

ところで本当の問題は発症日よりも感染日です。去年の第一波の頃に云われていたのは潜伏期間は5日ぐらいと。
(図4)

つまり去年のクリスマス以降、年末年始に感染が急拡大していたということになります。普段の年よりは静かだったとしても、やはりクリスマスに年末年始の人の接触密度は高かったということでしょうか。
ところで、去年の第一波の頃と比べると、PCR検査の態勢が大幅に違いますので、当時云われた「感染から報告されるまでのタイムラグは2W」より多少は短くなっているようです。去年の上の図では発病(発症)から報告までの期間は約8日となっていますが、(図3-3)によると50%を超えるのは5日目です。潜伏期間5日を加えると「報告日別による陽性者数の推移」や「確定日別による陽性者数の推移」は約10日前の感染状況を示していると。

さて、今日(1/18)の発表データを収集しないと。あれ? まだ公表されていない。もうすぐ22時なのに。

1/30 追記

感染者推移のグラフ3種類は毎日更新を続けているのですが、下のグラフは普通の人はあまり見たことが無い、一番実態に近い発症日別グラフの1/30時点です。青い部分が1週間前までの感染者赤がその後1週間で発見された症状のある感染者
11月から急拡大を始めた第三波も1/4にピークを打ったあと急に下がっています。


ただし信用出来るのは1週間前(1/23)までの部分で、直近1週間は赤い部分のように遅れて検出されます。例えばその1/23の1週間前は1/16ですが、1/23以降に増加した分(赤)はそんなに多くはありません。つまりこの1/30のグラフの1/23の高さは、今後1週間でちょっとは増加しても、そん なには変わらないと予測出来ます。逆にグラフの1/23以降はこの先1週間でかなり上乗せされるということに。

もうひとつ、潜伏期間が5日ぐらいありますから、ピークの1/4前後に発症した人達が実際に感染したのはその前の大晦日前後です。よく2週間ぐらい経たないと本当の状況は解らないというのはこのグラフで実感染の拡大・終息の実態を判断するからです。
もっとも医療現場のピークは今が激戦中で今後更に悪くなる可能性はありますが。だいたい、年末年始にあまりに急激に増加したので、それに比べれば今は下がっているというだけ。
今は二波のピークの2倍ぐらいの高さで、一波のピークの4倍ぐらいです。