2016.04.10     東慶寺で明月椀講演会 

今日は曇り空なのに北鎌倉へ。線路越しに円覚寺白鷺池の桜です。

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こちらも円覚寺の桜。曇りじゃ桜の写真はダメだろうって? そうなんですけどね。
でも今日は東慶寺で特別展「鎌倉の名宝 明月椀」で小松大秀先生の講演会があるんです。

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明月椀って、明月院に残っていた織田有楽斎が贈ったとの伝承のあるちょっと特殊な形の漆椀なんですよね。東慶寺に明月椀があったのかって? いや〜、私も最初は気づかなかったんですが、今回は東慶寺所蔵品の展示じゃないんです。小西大閑堂の収蔵品のさまざまな漆塗の椀を中心とした展示。初めてじゃないですかね。あっ、更紗のときも東慶寺所蔵品じゃなかったか。

これは桜ではありません。ハナモモです。

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で東慶寺へ。

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まだ書院の中門は閉まったまま。入場は30分前ですかね?

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なのでそれまで写真を。本堂の枝垂桜はもう終わり。

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でもお茶室寒雲亭門前の桜は満開♪

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嗚呼、これで晴れだったら最高だったのになぁ。

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白蓮舎の前の畑です。何の畑かというと花菖蒲。

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え〜と〜、これ何だっけ? 紫式部じゃなくて清少納言でもなくて・・・、十二単だっけ。

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これなら任せなさい。大葉紅柏に御座います。たしか。

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これも任せなさい。タンポポで御座います。 それぐらい誰でも判るって? 
クソ! 外来種のタンポポではなくて在来種のタンポポで御座います。多分。でも背が高いなぁ。段々不安になってきた。(;^_^A アセアセ

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三椏ももう終わりかけですね。その向こうは八重桜?

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こちらはもう4月だというのに十月桜、つまり冬桜に御座います。まだ咲いてますよ。桜にあるまじき開花時期の長さ。

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宝蔵の「鎌倉の名宝 明月椀」展を見たあと、書院へ。中門は開いたのですが、書院の襖が閉まってる。まだなのかなぁ、と思いながら時間つぶしに写真を撮っていたら小松先生が。それで気づいたのですが、なんと、あの舞良戸の向こうにいつも通り受付の人がいるではないですか。

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で、その講演の内容は、なかなか興味深い。

まずはお題の明月椀ですが、残念ながら画像がありません。なので東京藝術大学美術館のこちらをご覧下さい。工芸店「ようび」さんによると沢山の写しがあるようで、現に「ようび」さんも輪島の尚古堂に作ってもらってるようです。だから買えます。12万円出せば。明月椀は織田有楽斉が100客作らせ、明月院に寄進したものとの伝承があるようですが、まあ鎌倉に行基が建てたお寺が沢山あったり、伝運慶作の仏像が沢山あるのと同じでしょう。「ようび」さんサイトにも「明月院と有楽斉の関係は判然としません」とあります。

あの形は室町とか桃山の時代からあったものかどうかは判りませんが、少なくとも江戸初期までは遡れるのかもしれません。後で気づいたのですが、神奈川県立歴史博物館には北条氏政がやはり100客作らせたとの伝承のある芹椀のレプリカが展示してありかなり似てます。

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私が唸ったのは明月椀よりも秀衡椀とか他の椀の方です。そして小松先生のお話で面白かったのはその絵柄。吉祥紋です。そのひとつに菊があります。その菊には二つの系統の謂われがあるとか。

ひとつは雛菊系。
東晋の詩人陶淵明(365〜427)の有名な詩lこ「采菊東籬下 悠然見南山」(菊を採る東籬の下、悠然として南山を見る)という一節があるそうですが、菊は、古来不老長寿の薬効がある花とされ、重陽(9月9日)のころ、野外で菊花酒を飲めば災厄を払う、と伝えられてきたそうです。
もうひとつは菊慈童系。
周の穆王に仕える少年が、些細な出来事から玉の不興をかい、奥深い山中に流される。しかしそこは菊花咲き舌Lれる仙境であった。山中を流れる谷川は、菊の葉から落ちる露を集めて不老不死の薬と化しており、その水を汲んで飲んだ少年は、ついに七百歳の長寿を得るに至ったとか。 ひとつめの伝承から二つ目の物語が生まれたんでしょうね。

そういうおめでたい物語が絵柄に好んで使われるそうです。昔の人はそういう本歌を知っていたからキーワードだけで本歌が連想出来て象徴化して、ついには菊と水の流れだけでもおめでたい物語を表わすようになったのが楠木正成の家紋でもある菊水とか。お酒の「菊水」はそこからきたのでしょう。昔よく呑んだなぁ。落ちぶれた今では2L紙パックな純米酒ですが。

あっ、皇室の紋の菊もそこからかな? 
本歌を知らないと理解出来ないのは短歌だけじゃないんですね。

あと、蕪(かぶ)やら葡萄にリスも絵付けの図柄に良く出てくるのですが、葡萄や藤など、蔓、蔦系の植物はどんどん伸びる。リスはネズミの仲間でねづみ算的に増える、つまり一族の繁栄を表すとか。な〜るほど〜ですね。藤の蔓がどんどん伸びるのは庭で嫌というほど体験しております。
蕪(かぶ)は甲、兜と音が一致して人の頭にたつもの、お頭。展示品の中に蕪漆絵椀というのがあって、黒漆の椀に赤漆で蕪の模様が書いてあるんです。椀の形も良いし、蕪の素朴な絵柄はどんくさ民芸な私の琴線にピッタリだったんですが、何で蕪なんだろうと思っていた謎が解けました。小松先生有り難うございます。

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ところで。今日ではないのですが、最近東慶寺ギャラリーでこのガラスの盃を入手しました。
用途はこの小粒の金平糖の器として。綺麗でしょ。橋村大作さんの作品だそうです。この方の作品は民芸な私には合わないのですが、でもこの盃はシンプルで持った感じもシックリくるし、光が当たったときの影も綺麗。

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金平糖を入れるとほのぼの感が漂ってきません? と言ってももう手元には無いのですが。
どうしたんだって? 金平糖とセットで若い女性へのプレゼントだったんです。(笑)

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