民芸・工芸    沖縄の金城次郎窯(生い立ち編)

壺屋の生い立ち編って、また歴史でも調べたのかって?
いやいや、私の壺屋ヲタクの生い立ち編で御座いますよ。ワッハッハ

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事の起こりは30数年前に友人と渋谷の沖縄料理の店に行ったところから始まります。
そのお店には壺屋の焼き物(金城次郎さんの魚の大皿)が沢山壁に飾ってあって、入り口の左側の棚には余った?小皿を売っていたのです。それがまあお店の料理の油の煙を長いこと吸っていたのか、まあ良い色合いになった小皿だったので御座いますよ。

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料理の注文もそこそこ、友人と二人でその棚に行き、あれこれと物色したものでした。
それがこの4枚(ほんとは5枚)のお皿です。今思えば「物色」などせずに有るもの全部買い占めておけば良かったと思うのですが、よくよく考えてみたら、もっとギンギラなどぎつい絵付けの方が殆どで、そのなかから味のある古いものを選んでいたような気も。

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あれはもう30数年前の話なのですが、既に壺屋も変わってしまった後、つまり我々はたまたま残っていた古いものに眼を輝かせていたのか、それとも単に店主(おばさん)が買った釜が違った、色々有っただけなのか。その後のいきさつからどうも私は両方であったような気がします。

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そんな訳で先のお皿を家に持ち帰り、「でへへ、いいじゃろ〜♪」と言っていたら、お袋だかばあちゃんだかが「そんなもんなら家にもあるのに」、「へっ? 何それ、どれ、どこ、見せてよ!」 とわめいて出てきたのがこの二つの飯椀です。

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「どうしたのこれ!」と言ったら、じいちゃんが銀座の三越だか松坂屋だかの展示会で買ってきたんだと。私の祖父母、両親は戦前は朝鮮に居て敗戦でほとんど着のみ着のままで引き上げてきましたので戦後の話でしょう。
引き上げ者ですから決して裕福ではなく、「銀座のデパート」なんて普段は行くはずも無いですから、おそらくはその展示会を聞いてそのためだけに行ったのでしょう。そして、そんなに高くはなかったこのマカイだけ買ってきたと、そんな気がします。

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実はうちのじいちゃん(母方)は京都高等工芸(今の京都工芸繊維大)を出て朝鮮で高等工業(今で言う国立工大)の建築科の教授とか学長とかしていたので工芸にも関わりはあったのです。うちの母などは「柳宗悦ってナップン先生のことでしょ?」ですから。
「ナップン先生」って何? と聞くと、なんでも柳宗悦が朝鮮に来たときにうちのじっちゃんが骨董屋とか色々案内して、そのとき柳宗悦さんがうちのじっちゃんに「安物って朝鮮語で何て言うの?、ん? ナップン? よしよし」 ってんで良いものを見つけるとふっかけられないように、「う〜ん、これはダメじゃ、ナップンじゃー!」と値切り・・・、いや、商取引を有利に遂行したんだそうです。(笑)

いや、柳宗悦さんは物欲からではなく、そうして浅川兄弟らと朝鮮で「朝鮮民族美術館」を作ったのですが。
もっともうちのじっちゃん、柳宗悦さんが朝鮮に来る前からの知り合いだったとは考えられないので、浅川伯教さんの関係から案内を頼まれたんでしょう。うちのじっちゃんは私が柳宗悦とかに関心を持つ前に亡くなってしまいましたので浅川伯教さんのことは聞けなかったのです。残念。だもんで私が知っているのは当時はまだ幼子だったうちのお袋が、自分の父親(若き日のじっちゃん)やその同僚、仲間が「ハッキョウさんが・・」「ハッキョウさんが・・」としきりに話しているのをポカンと聞いていて「そのひとおかしくなっちゃったの?」と言ったのでみんなに大笑いされたってことだけ。いや、「発狂」だと思ったんだそうです。(笑)

しかしこのじっちゃんマカイ(飯椀のこと)、最初に手に持ったときには「うちのじっちゃん、先生様だった割には目利きでは無かったんだな〜」と思ったのですが。
いやね、私は高校の頃からお茶系だったもんですから、こういうお茶碗はお茶系の持ち方で手に取ってしまうのです。でも今になってこうして改めて眺めてみると・・・・
う〜ん、良いではないけ♪ これは 「先祖伝来の家宝」 と言うことに致しましよう。
えっ? 身びいきなって? 当然で御座いますよ! 
私はこれで商売をしている訳でも審査員をしている訳でもないのですから。思い入れと自分の好みが全てで御座います。「力が無い!」とか「焼きが・・」とか申すことも御座いますが、そりゃ実はここだけの話、「好きでない」ことにもっともらしい理由を適当にこじつけているだけで御座います。

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おや? ひょっとしてじっちゃんも私と同じで不良品を掴まされたんでしょうか。
う〜ん、だから孫の私まででけそこないを集めて喜んでいると。
血は争えません。フキフキ "A^^;