賄い工芸編     子羊の香草焼き


またの名をバカラとサンルイと小鹿田の饗宴で御座います。
事の起こりは、今日「もやい工芸」の奥様とお皿の話しをしていて「岩田さんはお皿にはお漬物と納豆しか乗せないんですものねぇ」と言われたことからでありました。

無礼者メ! おはぎだって乗せるぞ! それに納豆はお皿じゃないわい!
ええい、こうなったらわしが「焼物と歴史と自転車とお漬物だけの人間」ではないことを見せてくれるわ。頭が高い! 野外料理列伝の焚火奉行を知らないか! 

ホントを言うと何年ぶりかでえらい味の良い、しかし扱いの難しそうなワインを手に入れていていたのです。ところがこいつの飲み頃が何時間後か解らない。と言うかえらい長くおかないとダメかもしれない。となると、これを飲むには3連休ぐらいがちょうど良いと言うことでもあったので。

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買ったばかりのデジカメでISO1600ノーストロボです。ワインの色までは出ませんね。

 真っ当なワインなんて10年ぶりぐらいでしょうか? こちらの事の起こりは銀座の「たくみ」にそれこそ30数年ぶりに行って沖縄の古い土瓶を買ったことからでした。私が持っていなかった小橋川窯のものです。
 ルンルン気分で店を出て、そう言えばここは「三美」の近くではないけ、あの親爺さんまだ生きているんかしら? と覗いてみたら、ワイン屋さんなんだけど店の名前が変わっている。入っていいのかしらって思うぐらいえらい高級感あふれるお店になってる。なんか輸入商社のアンテナショップみたいな感じ。が店員の美人のお姉さまに釣られて入ってしまったのであります。(笑)

あの親爺さんは亡くなったそうで「三美」は'95 で閉店。今はそのときのスタッフと輸入業者のトーメンが引き継いで「マルシェ・ド・ヴァン銀座」と言うお店になったようです。

同じ作り手のワインが沢山あるような。で、なんか有名人らしいらしい作り手のワインのテイスティングを勧められました。ひとつは地方名クラス、もうひとつは村名クラスで同じビンテージ、2001年です。ランクは下なのに地方名クラスの方が美味しかった(いや好み)。でもお値段はそのクラスの一般的なものの2倍ぐらい。

エーッ、嘘ー! とビックリしたのはそのテイスティングしたものは4日ぐらい前に開栓したものだと。まあ閉店時間には空気を抜いていたらしいですが。味はいかにもブルゴーニュ・ピノノワール、まだ若い感じだけどしっかりしている。これってあと数年寝かせておいたら化けるんじゃないかしら、いや解りませんが。

ちなみにこれを書いている時点で、開栓、ディキャンタしてから12時間経過です。普通ならもうアウトって時間ですが、だんだん味が際だってきました。でもまだピークには至っていません。もう飲まないようにしないと無くなってしまうぞ。(;^_^A アセアセ…

と言う訳で、開栓、ディキャンタしてから食材の買い出しに。ちなみに我が家にワイン用のディキャンタはひとつしかありません。バカラです。日本ではもっと装飾性の高いゴテゴテしたものが輸入されていますが実用的なこういうものもあります。妹に海外から買ってきてもらったもの。と言ってもシンガポールですけどね。
ワイングラスはサンルイです。サンルイと言うとこれまたギンギンギラギラカットグラスが有名ですが、こういうシンプルなグラスも有ります。誰もこれがサンルイだとは気が付かないでしょう。赤ワイングラスではこれが一番のお気に入りです(と言うか今はこれしかない)。確かにブルゴーニュのオーソドックスなグラスとは形が違うのですが。
「民芸」な皆さんには敵視されていますがこれらも「手仕事」です。私はこのディキャンタの力強さと比べると、高名な民芸手吹きガラスのディキャンタはどうしようもなく病弱でへたくそに見えてしまいます。お値段だって下手すりゃバカラの方が安かったりするし。「こねくりまわした茶陶とどこが違うんじゃい」って感じさえ。茶陶なら茶陶でも良いのですが、「民芸」ってそういうのは嫌いなんじゃなかったでしたっけ? いや良くは知りませんが。
まぁ、こういう物はあくまで個人の趣味の世界ですから本人が好きであれば他人がどうこう言う筋合いのものでは無いのですが。

さて、お皿は最初は石飛勝久さんの白磁の皿を使うつもりだったのですが、西友に鳥を買いに行ったら、どういう訳か鳥が子羊のあばらに化けてしまったので御座います。(笑)
この量が乗るのは我が家には小鹿田の坂本茂木さんのものしか無いのですわ。
ブルゴーニュワインにクリスタルデキャンタに小鹿田かい? う〜ん、もの凄くミスマッチな気がするが・・・、まあやってみましょう。フキフキ "A^^;

さて、何年ぶりかでお料理開始!

シースニング用のつゆみたいなものがパックされていましたが捨てました。そっちの方が美味いかもしれませんが、それじゃつまらん。
肉のシースニングにはちょいと時間はかかります。まずそのためにはスパイスを調合しなければなりません。黒胡椒、白胡椒をベースに、ポアブルローゼ(赤い粒)、オールスパイス、生タイムが無くとも乾燥タイムがあるさ。ここまでが基本。ついでに丁字も入れちゃえ、ナツメグも良いかも♪
要するに持ってるもの全部をいい加減に混ぜてるだけだろうって? お目が高い!
それをスパイス専用(当家比)のすり鉢に入れ、山椒のすりこぎで押し潰します。胡椒の実を潰すんですから並の力ではありません。真上から力を込めてグイ、バキって具合です。出来上がりは写真右ぐらい。

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それに塩とパン粉を加えてオリーブオイルで混ぜます。
あっ、ニンニクを入れるの忘れた! と慌てて切って混ぜます。が、もうパン粉を入れたあとなのですり潰せません。まあいいか。

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ちなみに食べ終わった後でバルサミコも使い忘れていたのに気が付いたのでありました。


そいつをラムチップにまぶして指で刷り込みます。こうすると味がしみ込むような気がする。これで30分から45分ぐらい適当に寝かせます。その間に香草焼きの香草を取ってきて(ううっ寒い・・・)、洗います。
ホントは生のタイムをバサっと乗っけたかったのですが、西友には品切れだったのです。そのかわり鉢植えのローリエとローズマリーをどっしゃり。・・・・・が、このどっしゃりが唯一の失敗で御座いました。ホントに唯一かって? 当家比で御座います。 (;^_^A アセアセ…

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さて、鉄鍋はどれにしましょうか? 
これにしよう。9インチのスキレット、こいつは5kgぐらいあります。ダッチオーブンの起源はアメリカ開拓時代に、フライパン2つを重ねて「未開の地」に出かけて行ったことに始まるとの伝承もありますから、これが元祖ダッチオーブンなのかもしれません。今ならチタンコッフェル150gぐらいですかね? 同じ目的で5kg! まあ彼らの移動は馬ですから。

肉のシースニング中にこいつを火に乗っけて古い油を焼き切ってしまいます。蓋、と言ってもこれだけでもフライパンになるのですが、こちらも火にかけてしまいます。
その間はパンとチーズでのんびりワインを楽しみます。この時点でディキャンタから3時間経過。普通なら十分飲み頃なんですが、このワインはまだまだですね。と言うのもワインの楽しみのひとつです。

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さて、古い油も煙となって飛んでいき、鉄鍋の底は乾い白っぽくなっています。
と言ってもあんまり強火でやると焼けすぎてダッチオーブンのシースニングからやり直しになるので、250度ぐらいを上限に、手をかざしてこれぐらいかな?っただけですが。
そんでもって、オリーブオイルを垂らしてスライスしたニンニクを低温で炒めます。オリーブオイルはバージンオイルじゃ無い方が良いのですが、我が家には2種類も置いてはいないのでエキストラバージンオイルを使ってしまいます。エキストラバージンオイルは匂いが強いからと言うのが避ける理由らしいですが、ラム肉だし香草焼きだからそんなもん屁でもありません。

そうそう、普通はラムの胸肉をブロックのままやるのですが、今日買ってきたものはもう切って薄くなっている。このままだと味が強すぎるかも、と言うのでシースニングの最後にボールにワインを入れて肉をそれに浸してシースニング用の塩とパン粉、スパイスを少し落としました。ついでにワインの味もしみ込むだろうと。最初からワインも入れておけば良かったかもしれない。まあいいか。
とまあ、適当なもんです。大体レシピはやりながら決めるので。

ニンニクが良い色に、つまりオリーブオイルがガーリックオイルになったのを見計らい、それを取り出しで火を強め、頃合いを見計らってラム肉をジュワッ!

蓋も焚き火なら上に熾火を乗せて加熱するのですが、家の中なので蓋をおもいっきりガス台で加熱しておきます。焦げ目が出来た頃を見計らい裏返して、軽く焦げ目が出来たかな? って頃に玉葱輪切りを敷き、その上にラム肉を乗せ、香草をどっちゃりと乗せて加熱しておいた蓋を乗せます。この蓋だけでも2kgあるのでそう簡単にはさめません。これでオーブン状態ですね。

火は弱火にします。玉葱は加熱緩衝材、焚き火なら熾火を脇にどけるとか、高く吊すってことで調整するんですが、肉は薄いしガスは底の中心に直に火があたりますので。

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その間にもうひとつのダッチオーブンに、お皿を入れてトロ火で暖めておきます。そして頃合いを見計らってラムをそちらに移します。これは加熱を止めてじっくり保温の為ですね。この時間に柔らかな熱とともに表面のスパイスなどの味が中までしみ通ります。

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その間に元のスキレットのパン粉と肉汁の焦げ目を落とし、油を軽く拭き取って新たにオリーブオイルを引き、パブリカ、ブラウンマッシュ、アスパラガスを塩だけで軽く炒めます。ちょっぴりは残っている肉汁・スパイスが隠し味ですね。


ほんで出来上がり! ワインはディキャンタしてから4時間半経過。
こうして見ると、クリスタルな世界では最高峰のバカラ・サンルイと小鹿田のマリアージュもなかなか良いですね。いや、意外。

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では頂きます。ガブッ! おっほっほ、旨い! 中はほんのりピンクが残っています。

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ちょっとレア過ぎないかって? 五月蠅いなぁ、私はこれぐらいが好きなの!
まあ、唯一の失敗はローズマリーを豪勢に使い過ぎたことですね。絵的には良いのですが香り強すぎ。台所はこの匂いで凄いことになってしまいました。 (;^_^A アセアセ…
敗因は西友にタイムが品切れになっていたことでありました。ローズマリーはひと枝、ふた枝ぐらいで良かったかも。タイムはねぇ、以前に種を買ってきて鉢に撒いたんですよ。でも芽が出ませんでした。フキフキ "A^^;

追伸

現在ワインはディキャンタしてから30時間半経過。渋みが消えかかって良い味になってきました。やはりこれはあと数年おいた方が良いのではないでしょうか? 
今4年目だからあと2年は。でも化けるか、その前に疲れてしまうかが解らないから地方名クラスで売り出したんでしょうね。しっかし、ほんと厄介なワインだなぁ。まあこれがワインの面白さでもあるのですが。