近衛文麿の別邸・荻外荘 |
荻窪二丁目からの道を更に進むと、善福寺川の先にこんもりとした林が見えます。
ここはもちろん昔から知っていましたが、昭和史の重要な史跡ということに気づいたのはつい最近のこと。スピノラ幼稚園こと旧橋田邸の比ではありません。あっちはたかが文部大臣。こっちは首相です。それも准宮家(江戸時代直前に皇室から養子を迎えたから)の公爵近衛文麿。あの頃首相はころころ変わっていますが他の首相の私邸なんて話題にもなりません。しかしここは違います。 近衛家の本邸はここではなかったのですが、こちらの別邸は「荻外荘」(てきがいそう)と呼ばれ、母の話によると当時の新聞にはよく出てきたそうです。つまり第二の首相官邸で、重要な政策決定のための会議や記者会見をここで行っていたんですね。詳しくはこちらすぎまみ学倶楽部の「運命の宰相・近衛文麿と荻外荘(てきがいそう)」をご覧ください。 表札には今も近衛と。
その門を反対側から。あんまり遠いんでどれがそうだか判らないかもしれません。
昔の写真では竹藪ではなかったと思うんだけど。建物は昭和2年に伊東忠太の設計で完成したそうです。もちろんそのときは入澤達吉邸でしたが。
ところで、現在は敷地が入り組んで、マンションも建ったり。いったいどの範囲が昔の荻外荘なんでしょうか。我が家から妹の幼稚園に行くときに、善福寺川を渡って目に入る坂の途中の右側のお屋敷も荻外荘なんでしょうか。この一画です。 森泰樹著「杉並風土記」上巻によるとこの荻外荘はこういう事情だったとか。
一町歩は100m四方、1万平米の広さです。でも大正の初期ならこのあたりは林の中。大金持ちでなくともこのぐらいの土地は買えたはず。あっ「松林一町歩を反あたり700円」って出てましたね。だから7,000円ですか。 7,000円なら私にだって買えますが、でも物価の違いが。大正元年から現在までの物価指数を連続して出しているものは無いのですが、日銀の消費者物価指数が明治12年から昭和27年まで。総務省の消費者物価指数が昭和45年から有ります。これを使うと、日銀指数で大正1年から昭和45年までに881倍。総務省指数で昭和45年から平成20年までに3.08倍、掛け合わせると約2,700倍です。大正1年の7,000円は現在の2千万円ぐらい? ところでこの入沢達吉博士という方はそれはそれで偉い方のようですね。1865年1月31日生まれで、別に元々お金持ちという訳ではありません。帝大教授で、1909年(明治42年)日本内科学会会長。1921年(大正10年)2月医学部附属医院長。4月に医学部長。大正天皇の主治医。1925年(大正14年)に定年で名誉教授。1934年(昭和9年)4月日本医学会会長。1938年(昭和13年)11月5日脳溢血により倒れ、同月8日逝去。ここを買ったのは帝大教授の頃で、売ったのは亡くなる前年ですね。 現在の近衛邸と、このお屋敷の間にはマンションがふたつ建っています。そしてこのお屋敷のマンション側には古い倉が。母屋も含めて、なんか戦前の建物のように見えますね。マンション建設前から、敷地はここで区切られていたとも考えられます。 あくまで私の推測で、なんの証拠もありませんが、こんな感じ? 目測でだいたい一町歩、100m四方の広さです。 ほんとかって? 現地を見るとあながちあり得ないことでもないとは思うのですが、あくまで私の想像です。地図で確認出来るかどうか。 ところで、『杉並風土記』でお馴染みの森泰樹さんが、それより前の昭和49年にお書きになった『杉並区史探訪』におおよその間取りが載っています。 おそらくは千代子夫人がお話になったことのメモから森泰樹さんが起こしたものではないでしょうか。間取りの並び順を示したもので、部屋の大きさを反映してはいないだろうと。取り壊されたのは東側だそうですから、上記の地図や、現在の航空写真での姿と一致しません。まあ、リフォームもなさっているでしょうが。 昭和14年の地図まずは昭和14年の地図です。西の角のお屋敷のあたりに家が書き込んでありますね。やはりこちらのお屋敷は最初から別物だったのではないかと。 昭和22年の地図東側の取り壊し前の姿でしょう。でもどこまでが荻外荘の敷地だったのか。
昭和22年頃の航空写真昭和22年か23年頃の米軍の航空写真です。はっきりとは判りませんが、まだ東側は取り壊されていないようですね。
昭和33年の地図ん? あの実線は何だ! 普通なら細い道なんですが、これは道ではありません。何故って下の方では道に平行して書いてある。等高線でもない。ひょっとしてこれ、西田町と東荻町との境界? ところで、我が家の母はこの荻外荘を西田小学校の向こうで善福寺川の向こう側と言っていたんです。全然違うくじゃない! その前を何度も歩いてるでしょ! 荻外荘についてはこちら「落合道人Ochiai-Dojin」サイトが詳しいです。 |