賄い風ツーリング車考 page3

ポジション−ハンドル高 

 ツーリング車の設計を一番特徴付けるのはこのポジションです。ただし、基本はそんなに摩訶不思議なものでは無いと私は思います。長距離でも楽な姿勢ってだけですから。
最大のポイントはハンドルの高さではないでしょうか。ロードだとサドル位置はちょい高め、と言っても巾は1cmの範囲でしょうが。で、ドロップハンドル上部でそのサドルから3〜5cmぐらい下がるのが標準と思います。

ロード以外ではロードより高いハンドル位置というのはMTBの入門書でも、古典的なツーリング車のひとつであるランドナーでも、ランドナーではないアメリカRivendell のツーリング車なんかでもそうです。やはり、早いこと最優先と、楽なこと最優先では乗車姿勢は違います。前傾姿勢がきついとサドルとお尻の接地面がどうなるかも考えてみて下さい。人間のお尻の形は上体を起こした姿勢で座るときが一番接地面が広く、無理が無いんです。木の椅子に座ってみると解ります。ツーリストとしても有名な某ランドナー屋さんは背中を丸めた姿勢の方が楽なんだとお客さんに言っていました。

 シート角

サドル位置ですが、最近のサドル&ピラーは調整巾がえらい広いですね。1度や2度の差なんかもうどうでも良いって感じですMAX4度ぐらいの調整巾があるんじゃないでしょうか?
でも革サドルの場合はその調整巾が狭まります。プラスマイナス1度 で計2度ぐらい?
 軽合ベースなんてやつだと調整巾なんかほとんど無い。まあそんなのを普通 のツーリング車に使う方は今では少ないとは思います。

そう言うわけで必ずしもシートピラー 角度と言う訳ではないんですが、平均的なサドルの設定を前提とすれば、常用速度とシート角度は 相関関係があるようです。歴史的にも最初はかなり寝ているような、それが道路の舗装化の進展と ともに常用速度が上がりシート角度も段々立ってきているようです。主にロードレーサーでの スピード追求の工夫でしょうか。


0002-.jpg

この図は30年ぐらい前の論文にあったスピードとペダリングピッチ(回転数)の最適値です。勿論時代の違いも個人差もあるでしょうから必ずしも正しいと言う訳ではないですが、ロードレーサーとツーリング車とのペダリングの違いは理解しやすいでしょう。

生理学的に厳密に言うと、足の回転速度(&負荷?)によって 使う筋肉が違い、それによって最適な乗車姿勢が変わると良く言われますが、元になる研究論文を読 んだことがないので確たることは言えません。

誰もそんなことは言っていないのですが、前傾姿勢が きついとサドル位置は前の方が体勢として楽、上体を起こしてサドルにどっかりと坐ってのんびり走 るには足を前に蹴り出す=サドルは後ろの方が楽ってことは実感的にも言えそうな感じがします。

とはいえ角度としてはせいぜいMAXでも71〜75度、通常は74〜73度ぐらいのところです。72度というのは最近はほとんど無いかもしれません。私のわびさび2世号は73度なんでサドル調整で実質72度にして走ってみたら、のんびり走行には割と良い感じですわ。

 トップチューブ長 

トップチューブ長、実際に重要なのはサドル中央からハンドルまでの距離ですが、人によって最適値はちがうかも。定説に従うのも「あたらずとも遠からず」で良いかもしれません。でも自分のポジションが決まっている、あるいは現在の自転車に不満が無いなら、それも参考にするのが間違い無いと思います。
1cmぐらいならステムで調整です。ハンドルとの関係はまた後で。

 BB位置

フレーム設計図では前後の車輪の軸を結んだ線からどれだけ下がるかをハンガーダウンとかBB Dropと表しますが、実際に問題になるのは地面からペダルまでの最短距離です。まあ、ほとんどの場合クランク長は170mmで考えるでしょうから地面からBB位置の高さで良いのですが。

ですから26インチと700Cで単純に比較しても意味がありません。例えば私の700Cロードレーサー(?)はハンガーダウン50mmですが、32Cのタイヤを履いて地面からBBの位地は約300mm。一方、26HEもハンガーダウン50mmですが、35mmのタイヤを履いて地面からBBの位地は約262mm。計算上は38mmの違いがあります。2〜3mmの測定誤差があるとしても35mmは確実に。

先に上げたロムルスと同じサイトですけど、RivendellのAtlantis Geometryでも26インチと700cでは32mmの差が有りますね。 それに加えて700Cロードに付いているクランクはプロダイスタンダードで165mm。26HEわびさび2世号にはシマノ・スタンダードの170mm。ここでまた5mmの差が出てなんと40mmの差。実際、BB位地の低いわびさび2世号の方がずっと楽です。

このBB位置ですが、これは走り続けるかぎり関係無いことですが、足つきの楽さはツーリング車にとっては重要なことです。ところがロードレーサーでもそうらしいです。足つきを楽にするには思いっきりBBを下げれば良いんですが、かといって下げすぎるとカーブでペダルが地面に接触、下手すりゃ転倒なんてことにもなりますのでそのへんの折り合いが問題でしょう。

03.jpg