北道3世号作成記 Page3

12/07に最終確認のはずが・・

さて、11/30の打合せが終わったとき師匠は「じゃーこれで作りだしちゃっていいかい?」と言ったのですが、一応私も昔は設計屋、
「いや、変更点を反映させた図面で検図をしましょう。そうすればその検収図面が契約書みたいになって、そこで私のチェック漏れがあったってそれは私の責任、図面が正しいってはっきりするじゃないですか。」
あとから思えばこれでとても重大な問題が露見したのです。冷や汗ものでした。いや、危ないところだった。

話は遡りますが2年前の2世号のときのジオメトリはこういう感じで決まっていったのです。もちろんMTBと同じ26インチと言うことは最初に伝えてあります。師匠が私を測定台にのせて色々採寸する。それを見ながら

師匠:う〜ん、シートチューブは500ぐらいだな。ヘッドチューブは100ぐらいでギリギリだよ

これはトップチューブ水平の普通のツーリング車感覚でです。それでハンドル位置はサドルから30〜50mm下がるとおっしゃる。それがロードレーサーでは標準的で、某師匠もそれが絶対に最適なポジションであるとおっしゃいます。

わし:「そんなのいやじゃい! ハンドル位置はサドルと同じぐらいが良いんだい!

とそっから攻防戦が始まったわけです。

なんせこちらはツーリング車と偽って「ツーリングもお茶の子さいさいマウンテンバイク」を作るつもりだったんですからロード頭の今野仁師匠と摺り合う訳が無いのです。
2ヶ月ぐらいかかったんじゃないでしょうか。まあその間に色んな話をしたのでこちらも勉強になったし、またあの師匠はここは絶対に譲らないだろう、しょうがないからそこは譲ってこっちを納得なせるにはどう説明したら良いだろうか・・・なんて毎回考えつつ、日曜になると町田に通ったのでありました。で、やっと師匠を根負けさせて、ではこれでとなったのがトップチューブ500mmの設計をベースに

  1. シートチューブを30mm下げて軽いスローピングにする。
  2. ヘッドチューブとトップチューブの接合位置はヘッドチューブが100mmのつもりで決めてそのあと20mmヘッドチューブを伸ばす。

となったのでした。
確かに数字が100個近く書いてある製造図面を渡されて「これで結構です」と承認してるんですからその時点で全ては私の責任、でも今ほど図面が読めなかったっんです。ともかく散々議論したところの値が合意通りであることは確認したんですが。
それはともかく12月 7日、出来ているはずの最終図面のチェックに町田のブルダーさんのところへ乗り込みました。したら・・・

師匠:岩田さんのメールは見てはいるけどまだ読んでないんだ〜。(;^_^A …
わし:なにー! ってことは図面の修正はまだ出来ていないってことですか!
師匠:いや、パラメタをちょっと変えるだけだからすぐ出来るよ。
わし:すぐ出来るようなもんで私しゃこれまで3週間も待たされてたんですか!
師匠:うっ、藪ヘビ、藪ヘビ。

と2階に上がって待つこと10分か15分? やっと図面を前に打ち合わせが始まりました。
図面と言っても数字は34箇所ぐらいの中間図面ですが、打ち合わせにはこれで十分です。もっとも教えてもらったものも含めて解るのは半分ですね。ところがそれまで知らなかったものの中に大どんでん返しが!

大どんでん返し

私の頭の中には2世号打ち合わせ初期の「シートチューブ(STL)500。ヘッドチューブ(HTL)100mmで標準、そこからSTLを30mm下げているんだからその分がスローピング、仮想トップチューブ(VTTL530mm)に対して約3度に相当と言うものが昔からあったのです。で、今回はHTLが120mmで2世号と同じながら溶接位置を普通にしたから20mmプラス。
一方STLは500ながらBB下がり(BBD)を5mm増やした(これは師匠の判断)から合計25mmのスローピングで約2.5度に相当する。2世号よりは0.5度下がってアメリカのツーリング車Rivendellと同じスローピングになると思った訳です。実際に某師匠のプログラムのOUTPUTでもスローピング25.5mmと打ち出されています。が、そこで師匠が身も凍る発言を!

師匠:「いや、前のは11.9mmだからスローピングは倍以上になるよ。」

私は思わず

嘘だー! そんなはずは無い、どっかおかしい、どっかに見落としがあるはずだー!

と叫んでしまったのでありました。

師匠:ななっ、何を言うか! 俺のプログラムに間違いは無い! 
  作る時だって何回も検証してるんだ! これで何十年(十何年?)フレームを作ってるんだぞ!
  ふざけるんじゃねえ!(`ヘ´) プンプン。
わし:いや、師匠のプログラムが違うなんて言ってないですよ、
  でもどっかに想定と違う要素があるとしか思えないでしょう。

で、二人で検証が始まりました。実際に2世号のスローピングを測ることに、

師匠:水平器を当てて「ほらこれの延長線を見れば大体解るんじゃない?
わし:そんな目測じゃ誤差がデカイよ。メジャーない? 
師匠:(ノギスを持ってきて)こんなんでどう測るんだい???
わし:ノギスじゃないよ、メジャー! 巻き尺

ともうパニクリ状態。で床からの高さを測ると確かにスローピングは12mmぐらい。う〜ん。

これで決定! 図面検収!

わし:ああでこうでだからこうなるはずでしょ
師匠:う〜ん、だけど今回はヘッドチューブを立てたじゃない。シートチューブも寝かしたし。
わし:う〜ん、でもそんなの数ミリでしょ、それだけじゃ説明出来ないじゃない。
師匠:オフセットを縮めたんだって相当効いてくるぜ。

説明出来ないのは後で検証するとして問題はこれじゃハンドル位置が今より15mmも高くなってしまうことです。ジオメトリは変えてもポジションは変えたくない。う〜んどうしよう。

わし:ツーリング車ってオフセット65mmぐらいが多いんでしょ? だったら55mmに5mmマイナスを逆にプラスにして60mmにしたら下がって良いかも。
師匠:ななっ、なんてバカなことを! ちゃんと信頼出来る計算式があってそれに準じて値を出しているんだから。そんな姑息なことを考えるのは間違っている!
わし:だってあの計算式のベースとなる実験は・・・ウンヌンカンヌン
師匠:どこで読んだかしらないがそんなのは間違いだ!

と、ひとしきりその話をしたあと

師匠:・・・まあそれも言えるかもしれないけどね。確かにフレームのジオメトリには検証されきっていないところが沢山あるけど、でもちゃんとした実験結果が出ているものは尊重した方が良いよ。特にあんたのアプローチの場合にはね。
わし:う〜ん、めちゃくちゃ正論。真っ当な方法はヘッドチューブを10mmぐらい縮めるしかないな〜。ヘッドチューブ角度は73にしたいしね〜。
師匠:その方が良いよ、ヘッド長110mmってのは決しておかしくないよ。そうしな。
  だいたいなんで120mmに拘るんだい。
わし:いや〜予備フォークの関係で全部2世号と同じにそろえた方が良いかなと
師匠:く、くっだらねー! そんなもんスペーサー噛ませばいいじゃねーか! 
  どうせ曲がったときの非常用だろ!
わし:じゃ〜さ〜、HTLを110にして再計算してくれません?
師匠:えっ、いまからやるの?
わし:だってここまで来たら一気に決着付けた方が良いでしょ。
師匠:まあそれもそうだ。

出来た図面では15.6mmのスローピングになりました。2世号が11.9mmだからその差は3.7mm、角度で言うと1.6度のスローピングです。これで決定! 図面検収! ふたりしてふ〜やれやれと溜息をついたのでありました。仕様決定まで約半年ですね。(笑)